【相続】「財産目録」を作成するための項目

財産目録を作成するにあたってプラスの項目になるもの、マイナスの項目になるもの、相続財産からは省かれる項目をリストアップしました。

「財産目録」を作成するための書類

一通り状態が把握できたら故人(被相続人)と近い関係の人と「どんな財産を持っていたか」を証言をもとに一度、箇条書きにして、その上で、現状、重要度の高い順にファイルボックスに分けられている書類等を、今度は項目ごとにまとめていきましょう。

以下に「財産目録」の主な項目をリストアップしておきます

財産目録(相続)としての基準は被相続人の「死亡日」の残高

日々流動する銀行口座や各種評価額の計上のポイントとしては「被相続人の死亡日の残高」になります。

後日にいろいろと更新されているものもあるかと思いますが「死亡日」での情報は肝心です。

とはいえ、死亡日前の財産の移動は「取り込み」として疑われる場合もありますので前後の資産の移動の状況は分かるようにしておきましょう。

プラスの相続財産

現金・預貯金

※取引記録の情報は多くの手掛かりになりますので大変ですが要注意。

現金、銀行口座の各種通帳(預貯金)、印鑑

普通預金通帳、定期預金通帳、総合口座通帳、ゆうちょ銀行なら普通貯蓄預金通帳、定額定期貯金証書、総合口座通帳、JAバンクなら貯金通帳・証書など。

通帳が見つからない金融機関でも、キャッシュカード、金融機関からの郵便物・メール(デジタル遺品より)、金融機関の粗品・ボールペンやカレンダーなど口座がある可能性がある。

故人名義でのその他の口座の有無・貸金庫の確認、死亡日の口座の残高証明、取引記録の取り寄せ(※最近は10年分の記録が一般的なようです)

※過去3年以内の相続人への贈与は相続税の対象になる(受取人の銀行口座の取引履歴も必要になる)

プラス分
→残高の確認
→故人名義の口座振替など他口座の有無
→3年以内の法定相続人への贈与の確認
→故人名義の入金(知的財産の有無、故人名義の著作権・版権など)
マイナス分
→金融機関の引きおとし(故人名義の借入金・クレジットカードの有無)→解約
→各種税金などの引き落とし(把握している税金関係との確認)
→各種有料サービスの有無(公共料金、Amazon、有料購読サービスなど)→名義変更、解約
→定期的な個人への入金は事故などの保証債務の可能性がある

・ネットの有料サービスなどは紙の明細もなく、解約しないとそのまま引き落としが続いてしまう。
・引き落とし口座名が簡単に分かる会社名前などではないモノも多くあります、引き落としの日付と相手先の口座名などをメールの履歴やインターネットで探してみる。
・もちろん、継続していない場合は単発の銀行振り込みでの購入の場合もある。

家族名義の通帳(名義預金)

被相続人が相続税対策として律儀に他人名義の口座を使って財産を分配していたと思われる、いわゆる「名義預金」というものがありますが、相続の申告で他人名義の銀行口座の預貯金を申告せず、後に申告漏れとして調査されるケースが実は一番多いようです。

生前贈与としての贈与は各個人との双方の同意が必要であったり、家族名義の口座であっても被相続人が管理していた場合などは生前贈与に認められないケースが殆どとのことですので(サプライズの意図は分かりますが)同意の元でない「家族名義の銀行口座(通帳)」などが見つかった場合は注意が必要です!

タンス預金・へそくり・隠し財産

銀行の取引記録がない高額な現金等が見つかったとしても注意が必要です。

あまり公にはされていないと思いますが、税務署には独自のデータベースが以前から存在していると言います。

実は、高額な買い物や現金の移動の際にそこに記録が残っているとの話で、税務官はそのデータとの比較を利用して「申告漏れ」の調査が入ることがあるとのこと。

もちろん、私自身も何も分かりませんが記録が残るものとして、以前の相続などで受けとった高額な現金や不動産売買の情報、高額な高級車などの購入の記録も残っているとのこと。

オープンに使えるようにするためにも、故人の現金である場合は相続財産の「現金」などとし、隠さずに申告することが重要です。

「相続時精算課税制度 選択届出書」の控え

稀なケースになりますが、贈与税などの税金の申告書の中で「相続時精算課税制度」を利用した控えなどがある場合は注意が必要です。

「相続時精算課税制度」とは生前贈与の中でも特殊な制度で、利用時の贈与税はかかりませんが被相続人が亡くなり、相続が発生した際には制度を利用した相手に贈与した財産を被相続人の相続財産に(金額ベースで)足し戻さないといけない制度です。

生前の何らかの事情で「相続時精算課税制度」を利用して贈与し、2500万円までの非課税の制度だったから(相続時に課税されるということなんですが)と本人ですら忘れている場合があるようです。

※申告者は受取人になるので、被相続人の自宅ではなく受取人のみが「贈与税の申告書の控え」とともに「相続時精算課税制度 選択届出書の控え」を所持していることもあります。

有価証券・金、銀、プラチナなどの資産

株式、国債、社債、投資信託、投資資産としての商品など

口座開設証明書、残高報告書、上場株式配当等支払通知書など。
株券や債券など紙の証券、会員権など、最近ではインターネット上にしかないケースも多い。
量が多い場合は銀行の貸金庫に保管されている場合もあり。

各証券会社に被相続人の口座の死亡日の残高証明書を取り寄せる
※証券会社によっては名義変更の際に相続人が新たに同証券会社にて口座を作らないといけない場合がある。
※遺産分割前に相続財産の調査として評価額を決める。
※価格変動のある資産は相続人に有利になる評価方法の規定があります。

各種組合への出資金

信用金庫、JA農協、生協・コープ、森林組合などへの出資証券。

故人が組合員で出資金がある場合は、死亡により脱退となますので出資金は相続財産として計上する。

不動産・不動産での権利資産

土地、建物、マンション、別荘

固定資産税の納税通知書、不動産登記の権利書、不動産登記識別情報などの所有不動産にまつわる書類。

これらの書類をもとに法務局で「不動産の登記簿謄本」を取得し正確な情報を得る。
また、探し出せた情報がない場合は、不動産の所在地の管轄の役所にて「名寄帳」(納税者ごとの所有不動産の一覧)を取得して所有する不動産の情報(※地番、家屋番号)を確認し「不動産の登記簿謄本」を取得する。

※地番・家屋番号は一般の住所とは異なりますので注意!

マイナス分
→「不動産の登記簿謄本」にてローンの抵当権の有無

故人が賃貸物件を経営されていた場合

アパート・マンション・戸建て・土地・駐車場などの賃貸借契約書

また、土地などが借地だったり、住居や会社などの不動産を借りている場合

各所賃貸借契約書

保証金、敷金など解約後の返還金の確認

動産

自動車、バイク、貴金属、絵画、骨董品、電話加入権など

車検証、自動車税の領収書、保険会社の情報(メールの場合もあり)→名義変更時にも必要

※新車の自動車・バイクなど一定の年数内では減価償却により一定の財産として計上する必要がある。
※高級車や希少価値のある自動車・バイクなども資産価値があり計上が必要、同じく高額な腕時計や絵画、宝石、コイン、地金、骨董品なども同様に形状の必要がある。
※実際はあまり値段が付かない場合もあるので一概には言えない。
※アナログ電話の「電話加入権」を財産として計上する場合がある(書類等はない)。

死亡保険

被相続人が受取人になっている生命保険や退職金など

各種保険証券、契約時の書類などを確認

受取人、金額などの確認

※死亡退職金が振り込まれる際の「支払明細書」

個人事業用財産、知的財産

過去3年分の確定申告の決算書

個人が個人事業を営んでいて事業用の財産(在庫・備品・車両・機械など)がある場合それらも相続財産になる。

故人名義の著作権・版権など

事業用銀行口座の取引記録の確認、事業の帳簿類など。

※被相続人が個人事業主で確定申告をしている場合は相続発生時から4ヶ月以内に相続人による「準確定申告」が必要になりますので事業の資料(パソコン内のデータ、オンライン上のデータ)なども重要です。

債券

他者(会社など)への貸付金、売掛金、損害賠償請求権など

金銭消費貸借契約書、借用書、請求書のデータ、内容証明郵便の控えなど

※準確定申告(以下で解説あり)にて「還付金」が発生した場合、未収金として計上する。
※国税還付金振込通知書、過誤納還付金通知書などの未収金の還付金など。

介護・障害をお持ちだった場合の書類

介護保険の被保険者証、老人ホームや介護施設などの入居申請書など

施設入居前に住んでいた自宅等の「小規模宅地等の特例」を受ける場合に、被相続人が「要介護認定」「要支援認定」を受けていたか、または入居していた施設が「老人福祉法等」に規定されているかことが要件になる。

障がい者手帳

相続税に対して一定の「障碍者控除」を受けることができる。

マイナスの相続財産

葬儀の費用・埋葬料

葬儀費用、火葬場・埋葬料などの領収書

お葬式の費用や法事の費用などは債務として計上できるので領収書などは保管しましょう、僧侶へのお布施や手伝ってくれた方への謝礼など領収書のないものに関しても正確な相手先と金額が分かるメモなどを保管します。

※お葬式の費用は「お通夜」「お葬式当日の費用」で以降の「初七日」や「四十九日」などの費用は計上できない。

※葬儀費用に関しては「死亡日」を過ぎるが計上できる。

※個人が自営業などで国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入していた場合「葬祭費」、健康保険に加入していた会社員の場合は「埋葬料」が一定額支給されますので2年以内の期限内で忘れずに申請しましょう。

借入金

銀行ローン、カードローン、住宅ローン、自動車ローン

ローンの契約書、カード作成時の通知書類、利用残高の通知書、メールでの明細(デジタル遺品)など

・銀行口座の取引記録を確認
・不動産登記謄本にて抵当権の有無
・クレジットカードなどは紙の明細がないことが多いので問い合わせをして確認

※住宅ローンなどで「団体信用生命保険」に加入していれば残債がなくなることもあるのでローン会社の契約書等を確認する。

また、借入金やローン情報は「信用情報機関」に「開示手続き」をすることができる。
「信用情報機関」は金融機関どうしで信用情報を確認する機関なので個人でも利用可能です。
他者債務の連帯保証人になっているかどうかの確認もできます。
・JICC(株式会社日本信用情報機構)
・KSC(全国銀行個人信用情報センター)
・CIC(株式会社シー・アイ・シー)
※各信用情報機関のホームページに開示手続きの案内がある。
※各信用情報機関の開示手続きでも決して100%とは限りません。

個人間での借金

金融機関からではなく個人間での「金銭消費貸借契約書」や「借用書」などで有効なものは同じく負債として計上。

債務は相続人に引き継がれることになります。

故人名義の買掛金

故人のビジネス上の未払金

各種請求書、事業の帳簿類など。

※被相続人が個人事業主で確定申告をしている場合は相続発生時から4ヶ月以内に相続人による「準確定申告」(以下で解説あり)が必要になりますので事業の資料(パソコン内のデータ、オンライン上のデータ)なども重要です。

保証債務

個人名義での事故などの保証債務

保証契約書、連帯保証契約書など
・銀行口座の取引記録から個人名義の口座への入金などを確認

また、他社債務の連帯保証人になっているかどうかは確認しづらいことですが個人の借入金やローン情報の確認と同じ「信用情報機関」に「開示手続き」をすることができます。
「信用情報機関」は金融機関どうしで信用情報を確認する機関なので個人でも利用可能です。
・JICC(株式会社日本信用情報機構)
・KSC(全国銀行個人信用情報センター)
・CIC(株式会社シー・アイ・シー)
※各信用情報機関のホームページに開示手続きの案内がある。
※各信用情報機関の開示手続きでも決して100%とは限りません。

損害賠償債務

罰則金や債務不履行などの債務

罰則金の納付書、弁護士などからの内容証明郵便など

未払いの税金

現時点で未払いの税金

未払いの所得税・住民税・固定資産税など、通知書、延滞通知書

※準確定申告(以下で解説あり)にて発生した故人の所得税も債務としてマイナスします。

未払い状態の代金

故人利用の未払いの医療費、介護施設の料金など

未払いの請求書、メールでの銀行振り込みの案内など。

※相続財産に計上できるのは被相続人の「死亡日」までのものになるので注意。

相続財産から省かれる項目

お葬式で受け取った香典

お香典は遺族が受け取る形になるので故人の財産にはならない

祭祀財産

墓地、位牌、仏壇、遺骨など

死亡保険金

故人以外が受取人の場合

受取金額が(500万円×法定相続人の人数)までは非課税

死亡退職金

故人以外が受取人の場合

受取金額が(500万円×法定相続人の人数)までは非課税

寄付金

公共団体や公益団体への寄付金

寄付金の領収書、銀行口座の取引記録の確認

その他

遺言で指定された債務免除益など

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